調剤業務の外部委託
こちらの記事では、調剤薬局の外部委託についてまとめています。調剤業務を外部委託する、とは一体どういうことなのか、またどのような目的があるのかといった点などを紹介していきます。
調剤業務の外部委託とは
薬機法において「薬局開設者は、その薬局で調剤に従事する薬剤師でない者に販売又は授与の目的で調剤させてはならない。」と規定されていますが、この規定について現在見直しが進んでいる状況です。このことにより、調剤業務の外部委託が可能になる見通しとなっています。
調剤業務の外部委託について議論が開始されたのは2022年のことです。2021年4月に行われた規制改革推進委員会にて調剤薬局の効率化について取り上げられたことをきっかけに議論が始まりました。
この議論では、まず2022年1月18日に日本経済団体連合会が内閣府の特命担当大臣(規制改革担当)に対して一包化を含む調剤業務の外部委託を容認するよう申請を行いました。その内容を受け厚生労相では規制緩和について検討し、翌日の1月19日には調剤薬局の外部委託に対し前向きな姿勢を示しました(ただし調剤に関する責任の所在や安全性に関する懸念など様々な問題点に対する議論は必要としています)。
「責任の所在が不明瞭になる」という理由から日本薬剤師会は反対の意思を示したものの、議論を重ね2022年6月7日に閣議決定・公表された規制改革実施計画の中で調剤業務の外部委託の解禁が明記されました。
その後、厚生労働省により「薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関するワーキンググループのとりまとめ」が発表されています。
発表された内容をまとめると「当面の間外部委託できる業務は一包化(直ちに必要とするものに限り、散剤の一包化は除く)に限定、委託先は同一の三次医療圏内とする」となっており、対象の拡大については外部委託が実施可能になった後必要に応じ検討する、という点が示されました。
参照元:厚生労働省「薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関するワーキンググループのとりまとめ」
調剤業務の外部委託の目的
厚生労働省によると「全ての薬局は2025年までにかかりつけ薬局としての機能を持つことを目指す」ということが示されています。さらに、薬剤師が地域で活躍するために「処方箋受付時以外の対人業務の推進」や「他の職種・病院薬剤師との連携を行う」「健康サポート業務の推進を行う」「薬局間における連携を行う」といったように、薬剤師が持つ専門性を地域医療に活かすことが期待されています。しかし、高齢化が進むにつれて一包化のニーズも増してきていることから、対物業務に時間を取られるケースも多くなるでしょう。
近年では薬局でもDX化が推進されていること、また全自動の分包機なども登場してはいるものの、コストの問題からなかなか効率化が進まないといった現状もあります。 こういった状況がある中で、様々な課題を解決する目的で調剤業務の外部委託が提案されています。対物業務の効率化をなかなか行えない薬局が、外部の薬局に調剤業務を委託することによって、上記で説明した対人業務へのシフトが可能になると考えられています。
調剤業務の外部委託で薬局・薬剤師はどう変化するのか
対人業務の充実
調剤業務を外部委託することによって、対物業務の効率化が可能であることから対人業務を充実させられる、といった面があります。
対人業務の例としては、調剤後にフォローアップを行ったり、さまざまな手引き書を作成するといったものが挙げられるほか、勉強会や症例検討会などへの参加といったように、自身の知識を磨くための時間を確保するといったことも期待できるでしょう。
また、上記でご紹介した「かかりつけ薬局」としての機能を持つ、という点に関しても対人業務を充実させることは非常に大切なポイントであるといえます。
対物業務の機能やスキルの低下
調剤業務の外部委託を行った場合に考えられる影響としては、対物業務の機能・スキルの低下といった可能性も否定できません。外部委託が進みすぎると、委託元の薬局における医薬品の種類や備蓄が減ることから対物業務の機能低下が起こってしまうケースも考えられます。このようなことが起きると、自然災害発生時をはじめとする緊急時に医薬品を提供するといった対応が行えなくなってしまいます。
このように、外部委託は良い影響ばかりとは限らないため、慎重な議論が行われているという状況になっています。
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調剤業務の外部委託で検討されるべき事項
責任の所在に関する検討
責任の所在については、委託元の薬局が責任を持つ、ということが基本はなるものの、外部委託を行った場合の調剤を全て確認するのは難しいといえます。このことから、問題が発生した場合にはどちらが責任をどこまで負うのか、という点について明確にしておく必要があります。
また、委託先における品質管理や調剤の業務をどうチェックするのか、といった体制についても検討することが求められる可能性も考えられます。
安全性の確保に関する検討
安全性をどう確保するのか、という点も外部委託を行う上では非常に重要となってきます。これまでは、受付・調剤・監査・服薬指導といった一連の流れを一つの薬局で行っていたものの、外部委託によりこの流れが分かれることになります。
新しい流れの中で、調剤過誤をどう防ぐのか、どのように安全性を保っていくのかといった方法についても十分に検討しておく必要があります。
コストに関する検討
外部委託を行う場合、医薬品の配送や情報共有のためにはどれくらいのコストが必要なのかという点についても検討する必要があるといえるでしょう。この部分を十分に確認しないまま外部委託をはじめた場合には、調剤に関する負担は減るものの、コストが余計にかかってしまう可能性もあるためです。どのような部分でどの程度のコストがかかるのか、といった点をしっかりと確認しておくことが大切です。